テレビ夕刊
映 像 詩 しずおか
映像詩 しずおか

1月12日放送  歌を染める

いにしえの歌に日本人の原点を追い求めている染色家が焼津市にいます。今回は、歌を染めるがテーマです。
『うぐいすの 鳴き散らすらむ 春の花 いつしか君と 手折り(たをり)かざさむ』

『春の日に 萌(は)れる柳を 取り持ちて 見れば都の 大路(おほち)し思ほゆ』

ここにある友禅染めは、和歌をイメージして染められました。ひとつの作品がひとつの歌なのです。

万葉集。日本最古の和歌集です。歌の数は4500首にも及びます。

自然を愛し、季節の移ろいに心を重ねた、いにしえの歌に魅せられたのは、染色家の西山 和恆(わこう)さんです。西山さんは、自分の心に響いた歌を瞬間に図案化し、色を付けていきます。
『あかねさす 紫野行き 標野(しめの)行き 野守は見ずや 君が袖振る』
万葉の歌を「色」「柄」「素材」で表現する。友禅の技術を知り尽くしているからこそなせる技です。
『ひぐらしの 鳴きぬる時は をみなへし 咲きたる野辺を 行きつつ見べし』
「ひぐらし」という言葉から透けるようなセミの羽を連想し、生地の中でも、最も薄い紗(しゃ)という素材を使いました。

歌から伝わってくる日本人の心情を、西山さんは生地に染み込ませていきます。

『あしひきの 山桜花 日並べて かく咲きたらば いた恋ひめやも』

さくらの花が幾日も咲き続けるならば、こんなにひどく君を恋しくは想わない。散るほどに君を想います。

西山さんの友禅は、私たちが忘れた何かを歌ってくれるようです。




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