テレビ夕刊
今月の特集
映像詩 富士山

6月14日 川と共に生きる(2) 「幻の芝川ノリ」
 
2回目は富士宮や芝川に流れる芝川水系でのみ採れ、今では「幻ののり」ともいわれる「芝川のり」を取り上げました。
富士山からの清流が流れる富士宮市の白糸地区。ここに、きれいな清流しか採れない川のりがあります。
芝川のりです。
しかし、年々採取できる量が減ってきているのが現状です。

この地区の区長を務める笠井軍二さん。
62歳。笠井さんはこの芝川のりを採ってきました。しかし、25年前ほど前からのりの姿は見られなくなったそうです。

大量に生えていた頃は、半紙大の大きさののりが約5000枚も採れていたほど。
今では、一枚分も採れない状態が続いています。
笠井さんによると、芝川のリの魅力は「なんと言っても、香りが抜群!歯切れもいい。普通ののりとは全く違いますよ。」とのことです。

芝川のリの激減を受け、県や富士宮市では研究会を立ち上げ、芝川のリの実態調査を行ってきました。調査地点は白糸地区を含む14箇所。
調査結果からも年々採れなくなってきているのがわかります。
考えられる要因は、水の中に窒素・リン酸・カリなど、植物に必要な栄養が増えてきていること。
自然界の中で、芝川のリが他の藻類に負けてしまっているのではないかということです。栄養が増えたのは、家庭などからの雑廃水が川に流れているのでは・・という指摘もあります。

調査では、芝川のリが育つ条件も明らかになってきました。
@水温が低く、通年一定温度(8〜15℃)
A河川の水量、流速があること(流速0.5/秒以上)
B日照が強いこと(日当たりの良い南、東向きがなお良し)
条件が揃わなければ育たない・・芝川のりは、非常にデリケートな生き物なのです。

今では、川には見られない芝川のり。
しかし、笠井さんの田んぼ脇の水路には少量だけ見られました。
上から見ると黒々としていますが・・・水路の中を覗くと、そこには鮮やかな緑色の芝川のりが必死にしがみついていました。
笠井さんによると、こんなところに着くなんて、今までは考えられなかった・・ということです。
芝川のりを取り巻く環境が変化していることの現れでしょうか・・。

芝川のりを、今でも大切に保存してあるという寿司屋さんを訪ねました。
富士宮市上井出にある「佐野家」さんです。

普通ののりと比べ、緑色が強いのが分かりますか?ちなみに価格は、普通ののりの20倍以上もするそうなんですよ!本当に貴重なのりです。
ご主人の佐野登さんによると、炙らないと香りが出ないそうです。
炙るうちにさらに緑色が濃くなってきました!
1988年頃から芝川のりで作ったのり巻きを客に出していた佐野さん。しかし、肝心ののりが採れなくなってしまったため、10年前から出すのをやめていました。
出していた頃は、特上寿司の中に1本入れていたんだそうです。東京からわざわざ芝川のり目当てに、お客さんが食べに来ていたということです。
のり巻きを食べてみましたが、まず香りがいい! また、パリッとした歯切れの良さ、噛むほどに味がでてきて・・本当に美味しかったです!
清流でしか採れず、まさに環境のバロメーターともいえる「芝川のり」。
いつの日か、再びこの清流に色鮮やかな帯が戻ってくる日を、地元の人たちは心待ちにしています。


特集バックナンバー
テレビ夕刊TOPへ戻る